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テンプレート導入が逆に高くついた話 ─ CMSやノーコードの”隠れコスト”

テンプレート導入が逆に高くついた話 ─ CMSやノーコードの隠れコスト

株式会社ファストコーディングで営業を担当しています長谷川と申します。お客様とお話ししていて気づいたことや、 フロントエンド開発、コーディング制作界隈で最近流行っていることを書いていこうと思っております。どうぞ宜しくお願いします。

最近、お客様からこんな相談が増えています。

「テンプレートで作ったサイト、結局フルリニューアルすることになりました…」

「ノーコードで安く済ませたつもりが、運用でお金がかかりすぎて…」

テンプレートやノーコードでのWebページ制作ツールは「初期費用が安い」「すぐ使える」という魅力がありますよね。私も営業として、お客様に「こういう選択肢もありますよ」とご案内することがあります。でも正直なところ、「安いから」という理由だけで選んでしまうと、後から大変なことになるケースを何度も見てきました。

今回は、テンプレートやノーコードの「隠れコスト」についてお話しします。

テンプレートが魅力的に見える理由

まず、テンプレートやノーコードWebページ制作ツールが人気な理由を整理しておきましょう。

  • 初期費用が安い:フルスクラッチ開発の1/10以下で済むことも
  • すぐに使える:最短で数日〜数週間でサイト公開
  • ノンエンジニアでも更新できる:ドラッグ&ドロップで編集可能
  • デザインが洗練されている:プロが作ったテンプレートは見た目がいい

これだけ見ると、「テンプレートでいいじゃん」と思いますよね。私も最初はそう思っていました。

実際にあった「隠れコスト」の事例

ところが、お客様から相談を受けていると、テンプレート導入後に困っているケースがかなり多いんです。いくつか実例をご紹介します。

事例1:デザイン微調整で想定外の追加費用

あるお客様が「ページのテンプレートを少しカスタマイズしたい」と制作会社に依頼したところ、「テンプレートの構造上、その変更は難しい」と言われたそうです。結局、その部分だけカスタム開発することになり、テンプレート代+カスタム開発費で当初予算の2倍以上に。

「ボタンの位置を変えるだけなのに、なんでこんなにお金がかかるの?」

テンプレートは「型」が決まっているので、その型から外れた変更はかえって高くつくことがあります。

事例2:ページ数が増えたら月額費用が跳ね上がった

ノーコードツールで作ったWebサイト。最初は5ページで月額1万円程度だったのが、事業拡大でページを増やしていったら、月額5万円を超えてしまったというケースです。

「年間60万円って、もうフルで作ったほうが安かったんじゃ…」

そうなんです。3年も使えば、スクラッチ開発の費用を超えてしまうこともあります。しかも、ノーコードツールはそのサービスに依存しているので、サービスが値上げしたり終了したりするリスクもあります。

事例3:SEO対策ができない構造だった

テンプレートで作ったサイトが、「検索順位が全然上がらない」というご相談。調べてみると、HTMLの構造がSEOに最適化されておらず、メタタグの設定も制限されていました。

「SEO対策のためにサイトを作り直すことになりました…」

結局、フルリニューアル。「安く済ませたつもり」が、2回分の制作費用になってしまいました。

事例4:外部サービス連携ができなかった

「MAツールを導入したい」「フォームのシステムと連携したい」という要望が出てきたとき、テンプレートの制約でAPIの連携ができないというケース。

「この機能、後から追加できると思っていたのに…」

テンプレートは「今できること」は得意ですが、「将来の拡張性」は考慮されていないことが多いです。

テンプレートと相性が悪い要件とは

営業としてお客様のご要望を聞いていて、「これはテンプレートだと厳しいな」と感じるポイントをまとめてみました。

要件テンプレートとの相性理由
ブランド独自のデザイン△〜×テンプレートの「型」から外れると高コスト
複雑なフォーム条件分岐やバリデーションに限界あり
外部システム連携×APIの柔軟性が低い
大量のページ月額課金で長期的に高コスト化
SEO重視HTML構造の最適化に限界
多言語対応△〜×対応していないテンプレートも多い
長期運用(3年以上)月額費用の累積、サービス終了リスク

逆に、テンプレートが向いているのは:

  • 短期間のキャンペーンサイト
  • 初期検証用のMVP(最小限の機能で素早く市場投入)
  • シンプルなコーポレートサイト(5〜10ページ程度)
  • ブログやお知らせ中心の情報発信サイト

ディレクター向け「テンプレート導入の判断基準」

お客様やディレクターの方が「テンプレートにするか、スクラッチにするか」を判断するときのチェックリストを作ってみました。

テンプレートを選んでも大丈夫なケース

  • □ サイトの運用期間は2年以内
  • □ デザインはテンプレートのままでOK
  • □ ページ数は20ページ以下
  • □ 外部システムとの連携予定はない
  • □ SEOは「あればいい」程度(=広告メインで流入を稼ぐ場合)
  • □ 初期費用を最小限に抑えたい(運用費用より優先)

→ 4つ以上当てはまる場合は、テンプレートが適しています。

スクラッチ開発を検討すべきケース

  • □ ブランドの世界観を表現したい
  • □ 3年以上の長期運用を予定している
  • □ 将来的に機能追加・システム連携の可能性がある
  • □ SEOで上位表示を狙いたい
  • □ 独自のフォームや会員機能が必要
  • □ トータルコスト(初期+運用)を最適化したい

→ 2つ以上当てはまる場合は、スクラッチ開発を検討してください。

「安物買いの銭失い」にならないために

テンプレートやノーコードは、使いどころさえ間違えなければ素晴らしいツールです。でも、「安いから」という理由だけで選ぶと、後から高くつくことがあります。

私がお客様にいつもお伝えしているのは、「初期費用だけでなく、3年間のトータルコストで比較してください」ということです。

  • テンプレート:初期30万円+月額2万円×36ヶ月=102万円
  • スクラッチ:初期100万円+月額0.5万円×36ヶ月=118万円

この例だと、3年でほぼ同じ。でもスクラッチなら自由度が高く、4年目以降は差が逆転します。さらに、途中でリニューアルが必要になったら…テンプレートの方がトータルで高くなることも珍しくありません。

まずはご相談ください

「うちの場合はどっちがいいの?」というご質問、大歓迎です。テンプレートが合っているケースなら正直にそうお伝えしますし、スクラッチが必要な場合はその理由をきちんとご説明します。

ファストコーディングでは、フロントエンド開発のプロとして、お客様の要件に合った最適な選択肢をご提案しています。「テンプレートで始めたけど困っている」というご相談も、もちろんお受けしています。

お気軽にお問い合わせください。

週末は久しぶりに釣りに行ってきました。糸を垂らしながら、「テンプレートは釣り堀みたいなものだな」と思いました。手軽に釣れるけど、大物を狙うなら、やっぱり本格的な装備が必要ですよね。Web制作も同じかもしれません。