株式会社ファストコーディングで営業を担当しています長谷川と申します。お客様とお話ししていて気づいたことや、フロントエンド開発・コーディング制作界隈で最近流行っていることを書いていこうと思っております。どうぞ宜しくお願いします。
最近、お客様との打ち合わせで「SEOとUI/UX、どちらを優先すべきですか?」と聞かれる機会が増えました。サイトリニューアルの相談では、ほぼ毎回この質問が出ます。お客様としては予算も時間も限られている中で、どこに投資すれば最大の成果が得られるのかを知りたい。至極まっとうな疑問です。
ただ、この質問に対して「SEOを優先しましょう」とも「UXを優先しましょう」とも、私は即答しません。なぜなら、この問いの立て方そのものに、成果が出にくくなる構造が隠れているからです。今回は営業の立場から、この質問にどう答えるべきかをお話しします。
「SEO対策をしたのに成果が出ない」という相談
まず、最近あった相談をご紹介します。
あるBtoB企業のWeb担当者の方から、こんなご連絡をいただきました。
「去年SEO対策に200万円かけてリニューアルしたのに、問い合わせがほとんど増えていないのです。何が悪いのでしょうか」
詳しくお話を伺うと、キーワード選定、メタタグの最適化、内部リンクの整理、表示速度の改善と、SEOの施策としてはしっかり実施されていました。その甲斐あって、検索順位は確かに上がっていたのです。主要キーワードで3ページ目から1ページ目に上がったものもありました。
でも、問い合わせは増えていない。
私はそのサイトを実際に触らせていただきました。すると、問題はすぐにわかりました。検索から訪れたユーザーが、サイト内で「次に何をすればいいか」がわからない状態になっていたのです。
具体的にはこういう状況でした。
- サービス紹介ページに問い合わせボタンがない
- 料金の目安がどこにも書かれていない
- 事例紹介はあるが、どのサービスの事例なのかが不明確
- スマートフォンで見ると、フォームが画面の一番下まで見えない
つまり、SEOで集客には成功していたのに、サイトのUI/UXが「問い合わせ」という行動を促す設計になっていなかったのです。
SEOは「入口」、UXは「出口」
この事例は特殊なケースではありません。私が営業として多くの案件を見てきた中で、同じ構造の問題を何度も目にしています。
お客様からはよくこんな質問をいただきます。
「うちのサイト、検索では上位に出るようになったのに、なぜか成果につながらないのですが」
こういうとき、私はお客様にこうお伝えしています。「SEOは集客の入口です。でも、入口から入った人が出口(問い合わせや購入)にたどり着けなければ、成果にはなりません」と。
飲食店に例えるとわかりやすいかもしれません。SEOは「お店の前を通る人を増やす施策」です。看板を目立たせたり、通りに面した場所に移転したりすることに近い。でも、店に入ったお客様がメニューを見ても何が良いかわからない、注文の仕方がわかりにくい、店内が居心地悪い状態だったら、お客様は帰ってしまいます。
この「店内の体験」に相当するのがUI/UXです。
整理すると、こうなります。
| 役割 | SEO | UI/UX |
|---|---|---|
| 目的 | サイトへの集客 | サイト内での行動促進 |
| 指標 | 検索順位・流入数 | 回遊率・CVR・離脱率 |
| 飲食店の例 | 看板・立地・口コミ | メニュー・接客・店内の雰囲気 |
| 単独で成果が出るか | 集客は増えるが成約は別 | 集客がなければ効果なし |
ここで重要なのは、SEOとUI/UXはどちらかを選ぶものではなく、セットで機能するものだということです。
「どちらが先か」ではなく「どの順番で投資するか」
とはいえ、お客様の予算は有限です。すべてを一度にやることが難しいケースも多い。そこで「優先順位」の話になるわけです。
私が営業としてお客様に提案するとき、こういう順番でお話ししています。
ステップ1:まずUI/UXの最低ラインを整える
検索順位がいくら高くても、サイトに来た人が離脱してしまえば意味がありません。まずは「来た人が迷わない導線」を作ることが先です。
具体的には以下の3点を最優先で確認します。
- 各ページに「次の行動」を示すボタンやリンクがあるか
- スマートフォンで主要な導線が問題なく機能しているか
- 問い合わせフォームまでのステップが3クリック以内に収まっているか
この3点を整えるだけでも、既存のアクセスからの成果が変わることは少なくありません。
ステップ2:SEOで流入を増やす
導線が整った状態でSEO施策を行えば、増えたアクセスがそのまま成果に結びつきやすくなります。順番を逆にすると、先ほどのBtoB企業のように「アクセスは増えたけど成果が出ない」という状態に陥りやすいのです。
ステップ3:データを見てUI/UXを改善する
アクセスが増えると、ユーザーの行動データが蓄積されます。どのページで離脱しているか、フォームのどの項目で入力をやめているか。このデータをもとにUI/UXを改善することで、成果をさらに伸ばせます。
この「UX → SEO → UX改善」というサイクルを回すことが、最終的な成果につながると考えています。
実際に「順番を変えた」だけで成果が出た事例
ある人材紹介会社のサイトリニューアルを担当したときの話です。
当初、お客様は「まずSEOを強化して、求職者の流入を増やしたい」とおっしゃっていました。予算は限られており、全面リニューアルは難しい状況です。
お客様からはこう言われました。
「まずアクセスを増やさないことには何も始まらないと思うのです。SEOに集中したいのですが」
お気持ちはよくわかります。でも、既存サイトを確認させていただいたところ、気になる点がいくつかありました。
- 求人検索の結果ページから個別の求人詳細に進むと、「応募する」ボタンが画面の一番下にしかない
- スマートフォンでは求人情報が長文表示になり、応募ボタンまでスクロールが非常に長い
- 「まずは相談だけでも」という選択肢がなく、「応募する」しかない
私はお客様にこう提案しました。「まず2週間だけ、UXの改善に時間をいただけませんか。それで数字が変わらなければ、すぐSEOに切り替えましょう」と。
具体的に実施したのは以下の3点です。
- 求人詳細ページの上部に「応募する」ボタンを追加(ページ下部と合わせて2箇所に設置)
- 「まずは相談する」という軽いアクションのボタンを新設
- スマートフォン表示で求人情報を折りたたみ式にし、応募ボタンまでの距離を短縮
大規模な改修ではありません。コーディングの工数としては3日程度の作業でした。
結果、2週間後にはフォームへの遷移率が1.8倍になりました。実際の応募数も、月平均で約40%増加しています。アクセス数は変わっていません。既存の流入を、導線を整えることで成果に変えただけです。
この結果を見て、お客様はこうおっしゃいました。
「SEOにお金をかける前にやるべきことがあったということですね。先に言っていただけて助かりました」
その後、SEO施策にも着手し、流入数と成果の両方を伸ばすことができました。
「SEOだけ」「UXだけ」が失敗しやすい理由
念のため申し上げますと、SEOが不要だと言いたいわけではありません。SEOは集客の柱であり、長期的な資産になる施策です。
ただ、営業として多くの案件を見てきた中で、片方だけに偏った投資は成果につながりにくいと感じています。その理由を整理してみます。
SEOだけに偏った場合:
- 検索順位は上がるが、サイト内で迷うユーザーが多く離脱率が高止まりする
- アクセスレポートの数字は良いのに、問い合わせや売上に反映されない
- 「SEOは効果がない」という誤った結論に至り、施策自体をやめてしまう
UXだけに偏った場合:
- サイトの使い勝手は良いが、そもそも訪れるユーザーが少ない
- 既存のリピーターには好評だが、新規顧客の獲得につながらない
- 「リニューアルしたのに成果が変わらない」という評価を受ける
どちらも、もう片方が欠けていることが原因です。お客様にこの構造をお伝えすると、「バランスが大事ということですね」と理解していただけることがほとんどです。
ディレクターが商談で使える「回答の型」
ここまでの話を踏まえて、お客様から「SEOとUX、どちらが大事ですか?」と聞かれたときの回答の型をご紹介します。私が実際に商談で使っている流れです。
1. まず質問の意図を確認する
「SEOとUXのどちらを優先するか、というのは予算配分のご相談でしょうか。それとも、どちらの効果が大きいかという比較でしょうか」
お客様が本当に知りたいのは「どちらが大事か」の理論ではなく、「限られた予算でどこに投資すべきか」であることがほとんどです。
2. 現状を確認する
「現在のサイトのアクセス数と、問い合わせの件数を教えていただけますか。そこから優先度が見えてきます」
アクセスが少なければSEOの優先度が上がりますし、アクセスはあるのに成果が出ていなければUXの問題である可能性が高い。データに基づいて話すことで、提案に説得力が出ます。
3. 「入口と出口」の説明をする
「SEOは入口、UXは出口です。どちらか片方だけでは、最終的な成果にはつながりにくいのです」
この一言で、「二者択一ではない」ということが伝わります。
4. 具体的な提案に落とす
「まずはUXの最低ラインを整えて、それからSEOで流入を増やしましょう。その順番が、投資対効果が最も高くなります」
順番と理由をセットで伝えることで、お客様は社内での説明もしやすくなります。
お客様が本当に知りたいのは「成果の出し方」
ここまでお読みいただいて気づかれたかもしれませんが、お客様が「SEOとUXのどちらが大事ですか」と質問するとき、本当に知りたいのは技術的な優劣ではありません。「自社のサイトで成果を出すには、何から手をつければいいのか」ということです。
その問いに対して、「どちらも大事です」という答えでは、お客様は困ってしまいます。「まずここから始めて、次にここをやりましょう」という具体的なロードマップを示すことが、ディレクターやプロジェクトマネージャーに求められる役割ではないでしょうか。
私たち営業も同じです。お客様の予算と課題を正確に把握した上で、最も成果が出やすい順番を提案する。それが信頼につながると考えています。
まずはご相談ください
今回は、「SEOとUI/UXの優先順位」という質問に対して、営業として現場で見てきた実例をもとにお話ししました。
お伝えしたかったのは、以下の3つです。
- SEOは「入口」、UXは「出口」であり、どちらか片方だけでは成果が出にくい
- 投資の順番としては「UXの最低ライン整備 → SEOで流入増 → データに基づくUX改善」が効果的
- お客様への説明は「どちらが大事か」ではなく「どの順番でやるか」に変換すると伝わりやすい
実際に、UXの導線改善を先に行っただけで、フォーム遷移率が1.8倍になった事例もあります。大がかりなリニューアルではなく、小さな改善から始めることで成果を実感していただけることも多いのです。
株式会社ファストコーディングでは、フロントエンドのコーディング制作だけでなく、SEOとUI/UXのバランスを考慮したサイト改善のご提案も行っています。「検索順位は上がったのに成果が出ない」「リニューアルの優先順位が決められない」といったお悩みがございましたら、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。
週末にゴルフの練習場で隣の打席の方と話す機会があったのですが、「ドライバーの飛距離を伸ばしたいのに、アプローチばかり練習している」とおっしゃっていました。でも実はスコアを縮めるにはアプローチの方が効くのですよね。Webも同じで、派手な集客より地道な導線改善の方が、最終スコアには効いてくるものです。

