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お客様はデザインより”安心感”を買っている ─ 50代営業が見た購買心理

お客様はデザインより"安心感"を買っている ─ 50代営業が見た購買心理

株式会社ファストコーディングで営業を担当しています長谷川と申します。お客様とお話ししていて気づいたことや、フロントエンド開発、コーディング制作界隈で最近流行っていることを書いていこうと思っております。どうぞ宜しくお願いします。

今回は、ちょっと営業寄りの話をさせてください。テーマは「お客様は何を基準にWeb制作会社を選んでいるのか」です。

「デザインが良かったから決めました」は意外と少ない

営業をやっていると、受注後にお客様へ「なぜ弊社を選んでいただけたんですか?」とお聞きする機会があります。もう20年以上この仕事をやっていますが、正直に言いますと、「デザインが一番良かったから」という理由で選ばれたケースは、思ったほど多くないんです。

もちろんデザインが悪ければ候補にすら入りません。でも、最終的な決め手として挙がるのは、別のところなんですよね。

お客様からよくいただく言葉はこんな感じです。

「長谷川さんのところは、公開後のことまでちゃんと説明してくれたので安心でした」

「他社さんはデザイン案だけ出してきたけど、御社は運用の話まで踏み込んでくれた」

「何かあったときに相談できそうだなと思ったんです」

つまり、お客様が買っているのは「デザイン」ではなく「安心感」なんです。

なぜデザインだけでは選ばれないのか

これは考えてみれば当然の話なんですよね。お客様、特に発注担当のWebディレクターやプロジェクトマネージャーの方は、サイトを「作って終わり」とは思っていません。公開してからが本番なんです。

私がこれまで見てきた中で、お客様が抱えている不安はだいたいこの5つに集約されます。

  1. 公開後に不具合が出たらどうするのか
  2. 更新作業は自分たちでできるのか
  3. 追加の修正にいくらかかるのか
  4. 担当者が変わっても対応してもらえるのか
  5. トラブル時にすぐ連絡がとれるのか

どれもデザインの話ではありません。全部「公開後の安心」に関わることです。ここに答えられない提案は、いくらデザインが美しくても選ばれにくいんです。

実際にあった「安心感で逆転受注」した話

以前、ある中堅企業のコーポレートサイトリニューアル案件で、コンペに参加したことがあります。競合は3社。正直なところ、デザインの華やかさでは他社さんの方が上だったかもしれません。

でも私たちは提案書の中に、こういう項目を入れました。

  • 公開後3ヶ月間の無償バグ対応期間の明記
  • CMS操作のレクチャー会の実施スケジュール
  • 想定される追加修正の費用目安表
  • 緊急連絡フロー(土日対応の有無を含む)
  • 過去の類似案件での運用実績

結果、受注できました。後日お客様にお聞きしたところ、こうおっしゃっていただきました。

「デザインは正直どこも良かったんです。でも御社だけが”作った後”のことを具体的に見せてくれた。上司を説得するのにも、御社の資料が一番使いやすかった」

この「上司を説得しやすい」というのが、実はものすごく大事なポイントなんです。発注担当者は社内で決裁を通さなければいけません。そのとき「デザインが素敵でした」では弱い。「公開後のリスクがこう管理されています」の方が、決裁者には刺さるんですよね。

「安心感」を構成する3つの要素

長年の営業経験から、お客様が感じる「安心感」は大きく3つの要素で構成されていると考えています。

1. 透明性 ─ 見えないコストを見せる

お客様が一番嫌がるのは「後から想定外の費用が発生する」ことです。以前、別のお客様からこんなご相談をいただきました。

「前の制作会社さんは、ちょっとしたテキスト修正にも毎回見積もりが必要で、しかも金額がそのたびに違ったんです。怖くて相談もしづらくなりました」

これはよくある話なんです。費用の不透明さは、信頼関係を壊す最大の原因です。私たちは提案段階で「公開後によくある修正と、その費用の目安」を一覧にしてお見せするようにしています。正確な金額でなくても、「だいたいこのくらい」がわかるだけでお客様はとても安心されます。

2. 対応力 ─ 困ったときにすぐ動ける体制

Web制作でトラブルはつきものです。公開日にサーバーが落ちた、お問い合わせフォームからメールが届かない、スマホで表示が崩れている…。こういったとき、すぐに連絡がとれて、すぐに対応してもらえるかどうか。これがお客様にとっては死活問題です。

提案書に「緊急時の連絡先」「対応可能な時間帯」「初動までの目安時間」を書いておくだけで、お客様の表情が変わります。特に社内で情シス部門を持たない中小企業のお客様ほど、ここを重視されます。

3. 実績 ─ 「前にもやったことがある」の説得力

お客様が制作会社を選ぶとき、「同じ業界の実績があるか」を気にされる方はとても多いです。

「うちみたいな業種のサイト、作ったことありますか?」

この質問、営業をしていると本当によくいただきます。同業種の実績があれば、「業界特有の事情をわかってもらえる」という安心感につながるんですよね。もし直接の実績がなくても、「似た規模のプロジェクト」「似た課題を解決した事例」を提示できると、お客様の不安はかなり和らぎます。

ディレクターが提案に活かせる「安心設計」5つのポイント

ここまでの話を踏まえて、Webディレクターやプロジェクトマネージャーの方が、提案や見積もりに組み込めるポイントを整理しました。

ポイント具体的なアクションお客様が感じる安心感
1. 公開後サポートの明記バグ対応期間・範囲を提案書に記載「作りっぱなしにされない」
2. 運用コストの可視化よくある修正の費用目安を一覧で提示「予算の見通しが立つ」
3. CMS操作レクチャー納品時の操作説明会のスケジュールを記載「自分たちで更新できる」
4. 緊急連絡フロー連絡先・対応時間・初動目安を明記「何かあっても大丈夫」
5. 類似実績の提示同業種・同規模の制作事例を添付「うちの事情をわかってくれる」

これらは特別な技術やコストが必要なわけではありません。「すでにやっていることを、提案書に書くかどうか」の違いだけです。でも、書いてあるかないかで、お客様の印象はまったく変わります。

「安心感」は受注後のリピートにもつながる

もうひとつ、営業として実感していることがあります。「安心感」で選んでいただいたお客様ほど、リピートや追加案件につながりやすいんです。

デザインの良し悪しで選ばれた場合、次の案件では「もっと良いデザインを出す会社」に乗り換えられるリスクがあります。でも「安心感」で選ばれた場合は、「この会社なら任せられる」という信頼関係ができているので、多少の価格差があっても継続していただけることが多いです。

実際、弊社の長期継続クライアントに「なぜずっとお付き合いいただけているのか」をお聞きすると、こんな声をいただきます。

「何か困ったときに、すぐ相談できる関係ができているのが大きいですね。新しい会社にイチから説明するのも大変ですし」

お客様にとって、制作会社を変えるというのは実はかなりのコストなんです。技術的な引き継ぎだけでなく、「この会社にはどこまで言えばわかってもらえるか」という暗黙知の蓄積もゼロになりますから。だからこそ、最初の提案で「長く付き合える会社ですよ」というメッセージを伝えることがとても重要なんです。

デザインを軽視しているわけではありません

念のため補足しておきますと、「デザインは重要ではない」と言いたいわけではまったくありません。デザインの品質は大前提です。そこが一定のレベルに達していなければ、そもそも候補に入りません。

私が言いたいのは、「デザインだけでは差がつかない時代になっている」ということです。どの制作会社もデザインのレベルは上がっています。そうなると、最終的な差別化要因は「この会社に任せて安心かどうか」になるんです。

まずはご相談ください

今回は営業の立場から、お客様が本当に求めているものについてお話ししました。提案書のどこに何を書くかで、受注率は変わります。大げさな話ではなく、「安心感を言語化して見せる」だけのことなんです。

「うちの提案、デザインは評価されるけどなかなか受注につながらない…」とお悩みのWebディレクターの方は、一度提案書の中に「公開後のサポート体制」が書かれているか、確認してみてください。

株式会社ファストコーディングでは、コーディング制作だけでなく、お客様が安心して運用できる体制づくりもお手伝いしています。何かございましたら、お気軽にご相談ください。

最近、休みの日にゴルフの練習場に通い始めたのですが、なかなかスコアが安定しません。ゴルフもWebも、「安定感」が一番大事だなと実感する日々です。