AI駆動開発
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オフショア開発15年のワークフロー設計力が、AIコーディングにそのまま使えた

株式会社ファストコーディングでフロントエンド開発と技術戦略を担当している黒田です。

社内でAIコーディングの体制を本格的に立ち上げたとき、外部の方から「新しい技術への転換、大変だったでしょう」と言われることがあります。

正直なところ、そこまで大変ではなかったんです。

これは自慢で言っているわけではなく、うちの会社がずっとやってきたことの延長だったから、というのが実際の理由です。今回はその話を書きます。

15年間オフショア開発をやってきた会社

ファストコーディングは、15年以上にわたってオフショア開発を実施してきました。

オフショア開発というと「コストが安い海外のリソースを使う」というイメージがあるかもしれませんが、うちがやってきたことは単純な人件費削減ではありません。

言語が違う。文化が違う。時差がある。日本のチームなら「なんとなく」通じることが、海外チームには通じない。

この「通じない」という前提で、15年間ずっと仕事をしてきました。

「あうんの呼吸」を排除し続けた15年

日本のWeb制作現場では、暗黙の了解で回っている部分が少なくありません。

  • 「このデザインならこう組むよね」──コーダー同士ならわかる
  • 「ここまでできたら次に渡す」──タイミングは経験でわかる
  • 「このぐらいなら修正しなくていい」──判断基準は人による

国内チームだけで仕事をしていれば、こうした暗黙知でも回ります。経験のあるメンバーが揃っていれば、阿吽の呼吸でプロジェクトは進む。

でも、海外チームとはそれが通用しません。

うちのチームでは、この15年間、すべての暗黙知を明示的なルールに変換する作業を続けてきました。

  • 作業の開始条件と完了条件を明文化する
  • 判断基準を数値や具体例で示す
  • 工程と工程の「間」──次のステップに移るトリガーを定義する
  • 問題が発生したときの対処手順を事前に決めておく
  • すべてのルールを、読めば誰でも同じ判断ができるレベルまで具体化する

これは一般的なラボ型のオフショア──人材派遣の延長でチームを組むだけ──とは根本的に違います。作業そのものをワークフロー化することで、言語や文化が違うチームでも、一定の品質を一定のスピードで出し続けられる体制を作ってきました。

AIエージェントとオフショアチームは同じ構造だった

AIコーディングの体制を設計し始めたとき、社内で議論になったのが「これ、オフショアと同じじゃないか」ということでした。

AIエージェントは、指示されたことは正確にやります。でも、暗黙知は理解しません。「なんとなくこうしてほしい」は通じません。判断基準が曖昧だと、毎回違う結果を出します。

これは、オフショアチームとの協働でずっと経験してきたことと、まったく同じ構造です。

オフショア開発で必要だったことAIコーディングで必要なこと
作業の開始・完了条件の明文化エージェントの入出力の定義
判断基準の数値化・具体例プロンプトへのルール明記
工程間の引き継ぎルールエージェント間のデータ受け渡し設計
問題発生時の対処手順意図しない出力への対応フロー
品質チェックの分離(制作者≠検証者)制作エージェントと検証エージェントの分離

右と左、ほぼ同じことを言っています。

うちのチームがAIコーディングのワークフローを「すんなり」設計できたのは、新しいことを始めたからではなく、今までやってきたことをAI向けに翻訳しただけだったからです。

最初の1回は工数がかかった

とはいえ、AI向けのワークフローを最初に設計するときは、それなりの工数がかかりました。

オフショア向けのワークフローをベースにしつつも、AIエージェント特有の考慮事項──たとえばAIが同じ間違いを繰り返す場合の対処や、複数のエージェントを並行稼働させるときのコンフリクト回避──は新たに設計する必要がありました。

ただ、それは「あえて工数をかけてワークフローを作る」という、うちの会社が15年間やってきたやり方に則っただけです。ワークフロー設計に工数をかけることに対する社内の抵抗がなかった。これは大きかったと思います。

多くの会社では「ワークフローを作る時間があったらコードを書け」という文化があるんじゃないかと思います。うちは逆で、「ワークフローを作らずにコードを書き始めるのは禁止」というぐらい、工程設計を重視してきた。その文化がAI導入でそのまま活きた。

ワークフローは「完成」しない

もう一つ、オフショア開発の経験から学んだ重要なことがあります。

ワークフローは一度作ったら終わりではなく、運用しながら改善し続けるものだということです。

AI向けのワークフローも、最初に作ったものがそのまま使えているわけではありません。実際に回してみると、「ここの判断基準が曖昧だったからAIが想定外の動きをした」「この検証ステップは順番を変えたほうが効率がいい」といった気づきが毎週のように出てきます。

失敗というより、日々の運用の中でどんどん改善できる。これはオフショアのワークフローでも同じでした。最初から完璧なものは作れない。でも、改善のサイクルを回し続ける仕組みさえあれば、品質は着実に上がっていく。

まとめ

AIコーディングを導入するために必要なのは、「AIの使い方を学ぶ」ことよりも、「ワークフローを設計する力」だというのがうちの実感です。

  • オフショア開発で培った「暗黙知の排除」「全作業のワークフロー化」が、AIエージェント運用とまったく同じ構造だった
  • AI向けワークフローの設計は、新しい技術への転換ではなく、今までの延長
  • ワークフローは完成しない。運用しながら改善し続けることが品質を担保する
  • 「ワークフローに工数をかける文化」があるかどうかが、AI導入の成否を分ける

AIコーディングの品質がどう変わったかの体験談は、働くおかんの記事が現場目線で書いてくれています。あわせてぜひ。

フロントエンド開発の工程設計やAI活用について相談したい方は、株式会社ファストコーディングのお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。